知的財産権の権利化
知的財産権の獲得、あるいは保有される権利について様々な角度から検討し、最も効果的な保護や権利行使についてのソリューションをご提供します。
□ 人工知能(AI)分野の審査実務ガイド 第4次産業はデータ(D)、ネットワーク(N)および人工知能(A)に代表される新しいデジタル融合複合技術分野である。第4次産業の代表といえる人工知能技術はディープラーニング技術の登場で急速に発展し、現在多くの産業分野に適用されている。人工知能技術の発展とともに人工知能関連の特許出願も急増し、韓国特許庁では2020年12月、人工知能技術の特徴を考慮して人工知能分野の審査実務ガイドを制定した。(2021.12.、2023.5.改正) 人工知能分野審査実務ガイドは特許審査官だけでなく人工知能関連発明を特許出願しようとする発明者にも人工知能発明の特許明細書作成において明確なガイドを提示するもので、本ニュースレターでは本審査実務ガイドを要約し紹介する。 人工知能技術の核心を成す神経回路網およびアルゴリズムは、ほとんどがソフトウェアの形で具現される。従って、人工知能分野の審査実務ガイドは基本的にコンピュータ関連の発明*審査基準に従い、人工知能関連特有の技術について審査基準を補充して説明する形式で作成された。*コンピュータ関連の発明:発明の実施にコンピュータ·ソフトウェアを必要とする発明 人工知能分野の審査実務ガイドは、明細書記載要件と特許要件(発明の成立性、新規性及び進歩性)に区分し、それぞれに対する審査基準と審査事例を含む。本号では明細書記載要件に対する審査基準を要約して紹介し、特許要件に関する審査基準は次号で紹介する。 <人工知能分野審査実務ガイド1(明細書記載要件)> 本審査実務ガイドにて扱う人工知能関連発明の基本概要図は以下の通りである。 上記の基本概要図に基づき、人工知能関連の発明を以下のように分類することができる。 データ前処理分野:定型または非定型ローデータを人工知能モデルの設計条件に合うように抽出して精製する技術分野 学習モデル定義分野:前処理加工された学習用データを活用して学習する学習モデルを設定·具現化する技術分野 物理的具現分野:設定された学習モデルの全体または一部をハードウェアで具現化する技術分野 学習済みモデル分野:学習済み学習モデルを特定の応用に活用する技術分野 発明の説明における記載要件 イ.実施可能要件の基本事項 (原則)発明の説明に人工知能技術分野において通常の知識を有する者が出願時の技術常識に基づき、その発明を容易に実施できるほど明確かつ詳細に記載されているか否かを基準として判断する。 人工知能関連の発明を容易に実施するためには、その技術分野における通常の知識を有する者が発明を具現化するための具体的な手段、発明の技術的課題及びその解決手段などが明確に理解できるように発明で具現化する人工知能技術に関する具体的な内容を記載しなければならない。 人工知能関連の発明を具現化するための具体的な手段としては、学習データ、データ前処理方法、学習モデル、損失関数(Loss Function)などがある。 ロ.実施可能要件の違反事例 (1) 発明の説明において、請求項に記載された発明に対応する技術的段階又は機能を抽象的に記載しているだけで、その段階又は機能をハードウェア又はソフトウェアでどのように実行し、又は実現するかを記載しておらず、出願時の技術水準を参酌しても通常の技術者が明確に把握することができず、請求項に記載された発明を容易に行うことができない場合 (2) 発明の説明において、人工知能関連の発明を具現するための具体的な手段として、入力データと学習されたモデルの出力データ間の相関関係を具体的に記載していない場合 ここで、入力データと学習されたモデルの出力データとの間の相関関係が具体的に記載されている場合とは、 学習データが特定されていて、 学習データの特性相互間に発明の技術的課題を解決するための相関関係が存在し、 学習データを利用して学習させようとする学習モデルまたは学習方法が具体的に記載されていて、 このような学習データおよび学習方法によって発明の技術的課題を解決するための学習されたモデルが生成される場合を意味する。 (3) 発明の説明において、請求項に記載された発明の機能を実現するハードウェア又はソフトウェアを単に「機能ブロック図(block diagram)」又は「フローチャート」のみで表現しており、その「機能ブロック図」又は「フローチャート」からどのようにハードウェア又はソフトウェアが具現化されるのか明確に把握することができず、出願時の技術水準を参酌しても通常の技術者が明確に把握することができず、請求項に記載された発明を容易に行うことができない場合。 ハ. 留意事項 (1) 発明の特徴が機械学習の応用にある場合、通常の機械学習方法を活用して発明の技術的課題を解決でき、発明の効果を確認できるならば、学習データを利用して学習させようとする学習モデルまたは学習方法が具体的に記載されておらず、単に通常の機械学習方法だけが記載されていても、実施可能要件を満足していると見なすことができる。 (2) 発明の特徴が機械学習基盤の人工知能関連発明から収集されたローデータを学習用データに変更するデータ前処理にある場合、発明の説明が以下の場合には実施可能要件を満たしていないと見なす。 収集されたローデータを学習用データに生成、変更、追加、または削除するためにデータ前処理段階または機能をどのように実行するかまたは実現するか記載していない 収集されたローデータと学習用データ間の相関関係を具体的に記載していない (3) 強化学習基盤の人工知能関連の発明は、エージェント(agent)、環境(environment)、状態(state)、行動(action)、補償(reward)間の相関関係を含む強化学習方法を具体的に記載していない場合には、実施可能要件を満たしていないものと見なす。 請求の範囲における記載要件 人工知能に関する発明において、請求の範囲における記載要件の判断は、基本的に特許·実用新案審査基準の『請求の範囲における記載要件』に従う。 本ガイドでは『請求の範囲における記載要件』の中で人工知能関連の発明審査に必要な事項を説明する。 イ 発明が明確かつ簡潔に記載されていること (1) 発明のカテゴリー 人工知能関連の発明は『方法の発明』または『物の発明』として請求項に記載することができる。 人工知能関連の発明は時系列的に連結された一連の処理または操作、すなわち段階で表現できるとき、その段階を特定することにより方法の発明として請求項に記載することができる。 人工知能関連の発明は、その発明を具現化する複数の機能で表現できるとき、その機能に特定された物(装置)の発明として請求項に記載できる。 また、人工知能関連の発明は、 『コンピュータプログラム記録媒体の請求項』、 『記録媒体に記録されたコンピュータプログラムの請求項』、 『データ構造記録媒体の請求項』 形式に加え、学習モデルや学習モデルを利用する物を請求する場合には、 『記録媒体に保存された、学習モデルを具現化したコンピュータプログラムの請求項』、 『学習モデルを利用する物(装置)の請求項』 形式として記載することができる。 ここで学習モデルとは、学習対象となるモデルが学習手段と結合されコンピュータ上で学習されるものとして、請求項には学習モデルに加え人工知能関連の発明を具現化するための具体的な手段をさらに記載しなければならない。ここで具体的な手段とは、学習データ、データ前処理、損失関数などを意味する。 学習対象となるモデルには多様な機械学習モデルの基本的な構造を含むことができ、例えば神経網(神経回路)の場合、入力層、出力層および入力層と出力層の間に一つ以上の隠匿層からなる基本的構造に具体的な手段が追加された形態として記載することができる。学習対象となるモデルの例としては、CNNs、RNNs、神経網(Neural Network)などがある。 (2) 発明を明確かつ簡潔に記載されていない例 (イ)発明の遂行主体が明確でない場合 当該発明が「使用目的に応じた特有の情報の演算又は加工を実現したもの」であるが、請求項に記載された事項から発明の遂行主体(ハードウェア)が明確に把握できない場合には、当該請求項は明確に記載されていない。 (ロ)発明の対象が明確でない場合 請求項の末尾が「プログラム製品」、「プログラムプロダクト」、「プログラム産出物」等と記載されている場合、発明の対象を「プログラムを記録したコンピュータとして読み取り可能な記録媒体」、「プログラムが結合されたコンピュータシステム」のいずれにも特定することが困難であるため、発明が明確でない。
□ バッテリー火災安全技術分野の特許動向 全世界のバッテリー火災安全技術の特許出願、10年間で年平均15%増加 韓国が全世界出願件数1位(37.7%) ---------------------------------------------------------- 最近、二次電池の火災事故が急増し、熱暴走*によるバッテリー火災を予防·感知·消火する安全技術が注目を浴びており、韓国企業も関連技術の確保に総力を挙げている。 * 熱暴走:過充電、高放電、高温環境における露出、物理的損傷によるバッテリーの温度上昇で火災に至る現象を言い、熱暴走によりバッテリー温度は約1,000度にまで跳ね上がる。 韓国特許庁が最近10年間(2012~2021)の主要国特許庁(IP5:韓国、米国、中国、EU、日本)に出願されたバッテリー火災の安全技術に関する特許を分析した結果、2012年に715件に過ぎなかった出願件数がこの10年間で年平均15%ずつ増加し、2021年には13,599件に達し、そのうち、韓国籍の出願が37.7%と1位を占めることから韓国がバッテリー火災安全の技術成長をリードしていることが示された。 <国籍別出願動向> 全体出願13,559件のうち、韓国籍の出願が37.7%(5,122件)で1位を占め、中国(22.8%、3,099件)、日本(21.0%、2,855件)、米国(11.2%、1,518件)が後に続く。 特に、韓国は出願件数で2位を占める中国より1.7倍もの出願を行っていることが明らかとなり、当面の間、バッテリー火災安全技術の分野で韓国優位が続くものと展望される。 <技術類型別出願動向> バッテリー火災安全技術について類型別にまとめると、火災感知分野の出願件数が61.2%(9,866件)で最も多く、火災予防分野(32.8%、5,292件)、火災消火分野(6.0%、967件)の順となっている。 出願増加率は、火災消火分野が最も高く(年平均37.7%)現れたが、これは最近二次電池の火災事故が相次いで発生し、バッテリー火災の消火技術に対する要求が増加しているためと見られる。 <主要出願人> 主要出願人を見ると、韓国のLGエネルギーソリューション(2,735件、20.1%)、サムスンSDI(1,416件、10.4%)が1、2位を占め、3位CATL(701件、5.2%)、4位トヨタ自動車(398件,2.9%)、5位三洋(322件,2.4%)が後に続く。 10位圏内に6位SKオン(257件、1.9%)、9位現代自動車(189件、1.4%)など韓国企業が多数含まれ、韓国企業がバッテリー火災事故に対応するために関連技術を積極的に出願していると分析される。 一方、特許庁は国民の生命と安全を守るための積極行政の一環として、最近20年間(2003~2023)主要特許庁に登録されたバッテリー火災安全技術を中心に選別した『バッテリー火災安全技術特許100選』を発刊した。 発刊した特許100選は、特許庁のホームページ(www.kipo.go.kr)からダウンロードできる。 https://www.kipo.go.kr/ko/kpoBultnDetail.do?menuCd=SCD0200640&ntatcSeq=16918&sysCd=SCD02&aprchId=BUT0000048#1
□ 「真の発明者のみ記載可能」となるよう特許法施行規則改正 - 特許法·実用新案法施行規則一部改正令11月1日から施行 - 発明者訂正制度の改善等 ------------------------------------------------------ 韓国特許庁は特許法·実用新案法施行規則の一部を改正した。 11月1日から施行された今回の改正施行規則は、真の発明者の記載のための発明者訂正制度の改善などを主な内容としている。 <発明者訂正制度の改善(発明者訂正時期の制限、証明書類の要求)> 発明者訂正制度は、発明者の氏名表示権を保障するにおいて、手続きの錯誤による発明者の記載漏れや誤記を、事後的に補完できるようにすることをその趣旨とする。 従来の発明者訂正は、事実上いかなる時期においても可能であり、設定登録前に特段の証明書類を必要とせず補正書のみを提出すれば可能であった。 しかし、登録査定後から設定登録前に発明者を追加または訂正して手数料の減免を受けたり、真の発明者でない者が公報に掲載されるといった誤用がなされる場合があった。 改正された発明者訂正制度は、こうした誤用を防止するため発明者の訂正時期を一部制限し、設定登録後にのみ求められていた証明書類を審査官の審査手続き中にも提出させるようにして真の発明者だけを記載するようにしたものである。 〇 改正内容 訂正時期の制限 審査手続きが終了した登録査定後から設定登録前までの期間は、発明者の追加または訂正に対する審査が不可能であるため訂正可能期間から除かれる。 (例外)発明者の同一性が維持される場合(例、発明者の改名、単純な誤記、住所変更など)に限り、いつでも訂正が可能。 証憑書類の添付 出願後-登録査定前にも発明者を追加または訂正するには、補正書に以下の書類を添付し提出しなければならない。 発明者の追加または訂正理由を記載した説明書 出願人および追加または訂正される発明者の署名または捺印入り確認書類 設定登録後は、従来の規定及び実務と同様で、訂正発給申請書に以下の書類を添付し提出しなければならない。 発明者の追加または訂正理由を記載した説明書 特許権者および申請前後における全発明者の署名または捺印入り確認書類 〇 要約 改正前と後で、発明者訂正のための提出書類は、次のとおりである。
(1) 意義及び趣旨 特許取消申請制度(2017.3.1.施行)は、特許登録後一定期間の間、公衆に特許の見直しを要求する機会を付与し、何人も欠陥のある特許について先行技術情報に基づく特許取消事由を特許審判院に提出すると、審判官が当該特許の取消可否につき迅速に決定する。特許取消申請制度は、欠陥のある特許に対して早期検証を行い、問題のある特許の設定登録を防ぎ、権利の安定性を高める狙いがある。 (2) 特許取消申請対象 特許(実用新案)登録取消申請対象は、設定登録された特許及び実用新案である。複数の請求項がある場合は、請求項別に取消申請が可能である。ただし、特許権・実用新案権が消滅後は、取消申請ができない。 (3) 特許取消申請の理由及び証拠 特許取消申請は、特許法第29条に違反した場合(新規性、進歩性及び拡大先願)及び特許法第36条第1項から第3項までの規定に違反した場合(先願)に限って申請することができる。このとき特許法第29条違反の根拠として使用される先行技術は、書面又は電気通信回線を通じて公開された資料に限定され、公然・公知となった発明は除かれる。また、審査過程で拒絶理由に使用された先行技術のみに基づき、特許取消申請はできない。ただし、他の先行技術と組み合わせて進歩性を否定する根拠としては使用することができる。 (4) 特許取消申請期間 何人も特許権の設定登録日から登録公告日後6ヶ月になる日まで特許取消申請ができる。無効審判は特許権が消滅した後も請求することができるが、特許取消申請は特許権が消滅後には申請できない。 (5) 特許取消申請に対する審理及び決定 3人又は5人の審判官からなる審判官合議体は、特許取消申請が理由あると認められるときは、その特許を取消す旨の特許取消決定をしなければならない。特許取消決定をしようとするときは、特許権者及び参加者に特許取消理由を通知し、期間を定めて意見書を提出したり、明細書又は図面に対して訂正を請求する機会が与えられなければならない。審判官合議体は、特許取消申請が理由なしと認められる場合には、決定でその特許取消申請を棄却しなければならない。 (6) 取消及び棄却決定への対応 取消決定については、特許権者は特許裁判所に訴訟を提起することができる。取消決定が確定したときは、特許権は最初から存在しなかったものとみなされる。確定した取消決定について当事者は再審を請求することができる。棄却決定については、特許取消申請者は不服を申立てることができない。
先登録された商標があっても「共存」の道が開かれる 「商標共存同意制度(以下、コンセント制度と記載)」の施行により、先登録(出願)商標権利者が同意すれば類似の商標でも登録することが可能 関連紛争及び商標変更による損失を未然に防止し、後行商標出願人の安定経営にも寄与 ----------------事例---------------- 飲食店の開業を準備する甲氏は、自身の希望する店名を商標として登録できなかった。すでに特許庁には、乙氏の類似商標が登録されていたためである。乙氏は、地域とメニューが互いに異なるため混同するおそれがないと判断し、甲氏が商標を使用することを認めた。しかし、既存の制度上の問題から、甲氏は結局店名を別のものに変え、あらかじめ製作しておいた看板や食器を全て廃棄しなければならなかった。 アパレルネットショップを運営する丙氏は、最近、類似する名前の美容グッズショップがあることを知った。その美容グッズショップは既に商標登録されており、丙氏が商標権を侵害している状況にある。しかし、ショップの名前を変えれば、顧客を失う可能性も考えられ、どのように対応すべきかわからない状況にある。 ------------------------------------ 2024年5月1日付けで施行された改正商標法*によれば、先に登録された同一・類似商標があっても先登録商標権者の同意を受ければ、後行の商標登録出願の登録が可能になった。このようなコンセント制度の施行により、同一・類似の先登録(出願)商標のために自ら使用しようとした(後行)商標が登録できないといった、小規模事業者((後行)商標出願人)にとっては朗報である。* 商標法の一部改正(2023.10.31.改正、2024.5.1.施行) <先登録(出願)商標権利者が同意すれば、類似の商標でも登録可能> コンセント制度とは、先登録商標権者及び先出願人が、標章*及び指定商品**が同一・類似する後出願登録商標の登録に同意する場合***、該当する商標の登録を認められる制度をいう。* 標章:記号、文字、図形、立体形状またはそれらの組み合わせとそこに色彩を組み合わせたもの ** 指定商品:出願人が商標を使用したい商品の名称 *** ただし、商標と指定商品の両方が同一の場合は適用除外 従前、上記の事例1及び2のように同一・類似する商標が既に登録されているか、先に出願をした商標が存在する場合、後に出願した商標は登録が拒絶され、(たとえ、先登録権者の認可を得たとしても)商標の譲渡・移転といった煩雑な手続きを経て該当商標を使用する以外に方法がなかった。コンセント制度が施行されることで、出願人のこうした不便が解消され、商標権をめぐる紛争も未然に防ぐことができると期待されている。 特に中小企業や小規模事業者の商標使用と安定した企業経営に寄与する模様で、最近、拒絶査定を受けた商標の40%以上が同一・類似の先登録商標があるという拒絶理由のためであり、そのうち80%の出願人が中小企業及び小規模事業者の経営者であった。* 全拒絶件数(2022年国内審査基準)48,733件中、先登録による拒絶件数19,651件 これと共に、需要者保護のために、共存商標のいずれかが不正な目的で使用され、需要者に誤認混同を起こす場合には、その登録を取り消すことができるようにする、とした本制度の悪用を防ぐ規定も設けられている。
韓国特許庁は、従来の一方通行的な特許審査から脱却し、特許審査過程において、審査官が出願人との間でコミュニケーションをとりながら、案件毎にカスタマイズされた審査を行うことで、正確な審査に裏付けられた高い品質の特許を作り上げる様々な制度を行っている。 一つの製品群に関わる複数の知的財産出願を同時に一括して審査する一括審査制度、そして審査過程において拒絶理由通知に対応した補正案につき審査官と面談を通じて事前に意見を交換することができる補正案レビュー制度及び再審査面談制度が存在する。そのなかで補正案レビュー制度、及び再審査面談制度は、既に紹介した。予備審査制度は2024年3月1日に廃止されたが、本号では、一括審査制度について紹介する。 (1) 意義及び趣旨 一括審査とは、一つの製品群又は同一事業に係る複数の特許・実用新案登録・商標登録・デザイン登録出願について出願人が望む時期に一括して審査する制度をいう。本制度を利用すれば、企業の事業戦略に応じて、希望する時期に様々な知識財産権を同時に確保することが可能で、新製品発売時期前に製品に関する知識財産権のポートフォリオ形成に有利である。 (2) 一括審査を申請できる出願 一括審査の申請対象は、次の1.又は2.に該当する出願に限定され、審査着手前の2以上の特許・実用新案登録・商標登録・デザイン登録出願である。この特許出願及び実用新案登録出願は、審査請求された出願に限定する。(注:韓国では実用新案においても実体審査が行われる) 1つの製品群(サービスを含む)または同一事業に関連する以下のいずれかに該当する出願 出願人が実施している、あるいは実施準備中の出願 輸出促進に直接関わる出願 「ベンチャー企業育成に関する特別措置法」第25条におけるベンチャー企業の確認を受けた企業の出願、又は「中小企業技術革新促進法」第15条における技術革新型中小企業に選ばれた企業の出願 「一人創造企業の育成に関する法律」第11条第1項における一人創造企業技術開発事業の成果物に関する出願 「中小企業基本法」第2条における中小企業であって創業後3年以内の企業による出願 規制特例対象に関するもので「規制のサンドボックス」*申請を行った出願(*規制のサンドボックス:新技術、新産業分野において新製品やサービスをリリースする際、一定期間または一定の地域内で既存の規制を免除または猶予させる制度をいう) 同一の国家新技術開発支援事業の成果物に係る出願 (3) 一括審査手順 (申請) 一括審査を申請しようとする者(申請人)は韓国特許庁ホームページから一括審査請求書を作成し、一括審査申請対象証明書類を添付して申請する。 この際、申請人は一括審査申請日の日後より7日から14日までのいずれかの日を一括審査説明会の開催希望日として指定しなければならず、一括審査説明会希望日から14日になる日の日後で、いずれかの日を審査着手希望日に指定しなければならず、着手希望日の日後、3月になる日から1年以内のいずれかの日を審査終了希望日に指定し申請しなければならない。 (方式審査) 韓国特許庁の一括審査担当者は、一括審査を受けようとする出願が申請対象に該当するかどうか、および申請者の一括審査申請が申請手続きを満たしているかどうかについて審査する。 (一括審査説明会) 申請人は、担当審査官に一括審査申請出願について説明し、当該出願が単一のファミリーまたは同一の事業に関する出願であることを説明する。 一括審査担当者と担当審査官は、一括審査を受けようとする出願について一括審査の適否、および一括審査対象出願を決定する。 一括審査担当者、担当審査官及び申請者は、着手希望日と終結希望日に基づいて着手予定日ならびに終結予定日を協議にて定めることができる。 (審査処理) 担当審査官は、一括審査を決定した出願について着手予定日に合わせて審査を着手する。
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