善意の先使用による商標及び先使用者を保護、改正不正競争防止法施行
<事例>甲が商標の設定登録をしていない状態で商標『A』を使用し、小規模衣料販売事業を開始した。しかし、偶然にも乙が、同一‧類似の商標である『A’』を使用し、ソーシャルネットワークサービス、テレビ広告といった販促(マーケティング)活動を通じて短期間に認知度を獲得した。乙は甲を相手に不正競争行為を理由に警告状を送付し、販売差止を請求した。甲は、商標『A』を付した製品を販売し続けることは、できるか?
韓国特許庁は2023年9月29日から韓国内に広く認識された他人の商標(以下、「周知商標」)と同一・類似の商標を不正な目的でなく、先使用者が、該当商標の継続使用を可能とする内容などが盛り込まれた改正「不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律」(以下「不正競争防止法」)を施行する。(訳注;現施行済)
改正前は、先使用であっても同一・類似の他人の商標が広く認識された時点から、当該商標を使用することができなかった。従って、先使用者は、周知商標権者からの警告状により法的な対応を強いられ、最終的には、営業所における看板の交換や、生産品の廃棄せざるを得ないなど、先使用者にとって酷であるといえた。
改正不正競争防止法によれば、他人の周知商標と同一・類似する商標の先使用者は、不正な目的でない限り、当該商標を継続して使用しても不正競争行為に該当しない。
ただし「周知商標」と「先使用者の商標」が市場で共存する場合、消費者が、同一の販売者による商品であると誤認・混同するおそれがある。そのとき、これを防止するため、改正法では周知商標の保有者が先使用者に誤認・混同防止に必要な表示を請求できるようにした。しかし、今回の先使用者の保護規定は、自身の商標を他人が使用できないようにする、といった積極的な権利行使までを容認するものではない。
従って、自身の使用する商標が、積極的な権利として認めてもらうためには、韓国特許庁に他人より先に出願し、商標の設定登録を受けることが必須である。